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くいしばり

くいしばることで、様々な口のトラブルが起きてきます。

ただ、この「くいしばり」は無意識でやっているので、患者さん本人はまず気づいていません。

診察中はなるべくこの「くいしばりが原因である」ことを何とか伝えようとします。

しかし、まず納得いただくことは難しいです。

特に、大きな考え方のズレが患者さんと私の間であることが多いです。

患者さんは、

「食事をするときに、歯に負担がかかり、トラブルが起こる」と考えます。

一方で、私は、

「食事は大した力が歯に及ばないので、食事以外の時のくいしばりが原因だ」

と考えています。

まず、この考えの違いを説明するのですが、患者さんはピンときません。

患者さんに「くいしばってたんでしょうね」と言うと、

「いや、そんなことはありません」と答える人ばかりです。

「い~や、くいしばりです」

「くいしばってませんよ」

っていう会話になります。

「くいしばっていたかどうか覚えていません」と言って頂きたいのですが。。。

食事の時の歯にかかる力は大したことはない

食べるときに歯が接触している時間の総計は2~3分

ものを食べている時、上と下の歯がリズミカルに接触します。

一回の接触時間は0.5秒前後と、ほんの一瞬です。

食べ物をひとくち入れて、だいたい10~30回程度噛むとしてこれを朝、昼、夕と食事をして、上の歯と下の歯が接触している時間をたしたら、どれくらいかを計算すると2~3分程度であると言われています。

一方で、複数の方の平均値として、、

睡眠時間を8時間とすると、睡眠中に上と下の歯が接触する時間は15分程度あるという研究があります。

睡眠時の上下の歯の接触時間は食事の時の5倍の時間です。

歯ぎしりする方の歯と歯をすり合わせる音を聞いたことはありませんか?

あの音を聞いたなら夜中にすごい力が歯にかかっていることを想像できると思います。

このとき、歯ぎしりしている人は無意識です。

意識レベルが落ちている=寝ている状態です。

朝や午前中に歯やあごの筋肉、関節に症状が出る人は、この夜のくいしばり時間が長かったり、くいしばる力が強かったりしているのでしょう。

夢中になって趣味の畑仕事をしているときには、雑草をむしり取ったり、土をスコップで掘って植え替えたりと。。。

おそらく、この時もちゃんと、上と下の歯をしっかり噛みしめてい楽しんでおられるのでしょう。

足や腰が痛くなることは、動かしていたのだから当然だと理解できても、、、、

家に帰って、さぁ、夕食となり、夕食後に奥の金属のかぶせものの歯が痛んできます。

これが、作業中のくいしばりが原因だとは、なかなか納得できません。思い出せないからです。

食事の時に痛みを自覚する人に思い違いをしていただきたくないのは、以下のことです。

食事の時に症状を自覚するのは、すでに食事前の食べていない時間帯に、上と下の歯が接触し、力がかかっていて歯が過敏になったり、疲れ切っている。

食事は、「痛み」を感じるきっかけにすぎない。

例えていうならば、いつも歩かない人が、前日に何十キロも歩いたとしたら、次の朝、トイレに行こうと歩くときに、あちこち痛みを感じるはず。

朝の、ぼんやりしている意識の中で、「なんでこんなに足首、ひざが痛いんだろう?」・・・・・

「あっ、昨日慣れない散歩を長時間したからか」と納得します。

しかし、歯の運動(=上と下の歯を接触させた状態でグッと力をかけ続けること)をしたという、ことは、なぜか記憶に残らない、、というか噛みしめていたことを忘れているのです。

いざ、食事しようとして、冷たいビールをくいっと口に入れた瞬間にキーンとしみる。なんていうときは、おそらく直前のお仕事をくいしばって頑張りすぎたのかもしれません。

朝食時に食パンをかじっただけで、奥歯の金属が取れちゃった。てな時は寝ている最中にギシギシ歯を噛みしめて、金属のつめものを夜中に浮かせていたのであって、パンが原因ではないのかもしれません。

金属やセラミックが入っている歯は特に注意

口の中に、金属のつめもの、かぶせもの、セラミックの前歯などが入っている方は、くいしばることで歯が悲鳴を上げる危険度が増します。

できれば、通院中の歯科医院でマウスガードをつくってもらってください。

そしてそれを夜間、ジムに体を鍛えるときに持って行って装着しましょう。

くいしばりは、生きていく上でとても重要です。

くいしばり、ふんばりが利かず、転倒してしまう入れ歯を入れていない高齢者の方は度々問題として提示されます。

また、くいしばることで、体の軸が安定し、細かな作業するときも集中して行うことができます。

くいしばることや、食べること自体が、脳に癒しを与えることが知られています。

私に言わせるとこれが、コワいのです。

歯を上下接触させることで、ストレスを受けている脳に、脳内でつくられる麻薬をふりかけて、楽にさせることを覚えると、習慣になるからです。

もしも、歯の治療で歯よりも硬い素材が入っていない人や、歯科治療を受けていない人ならば、症状が出ても、日常の注意や、せいぜいマウスピースを夜間に装着してもらうことで乗り切れるかもしれません。

天然の歯なら、力を受け続けると、それなりの変化をしてくれます。

すり減ってきたり、歯の首元がはがれて、スリムになり、しなるようになって、力を逃がそうと対応してくれます。

ところが、歯の並びの途中に、歯よりも硬い素材を使って歯科治療を受けている部分は、時間の経過とともに、周りの天然の歯がすり減りを起こし、少しずつかみ合わせの高さが低くなってくるのに、硬すぎて、すり減らず、結果として相対的に周りよりも高くなってきます。

これが様々な症状をより強く出す原因となってしまいます。

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