冷たいものがしみる知覚過敏がなぜ起こるか
くいしばっている時間が長くなると、歯の中にある血管が充血します。
歯の中には血管とからみ合った状態で神経があります。
これらの血管と神経が、歯の内部にある硬い壁で囲まれた部屋に閉じ込められています。
血管が充血してくると、血管が膨らみからみ合っている神経を圧迫して過敏な症状が出てきます。
こうなると、歯ブラシを当てただけでも痛みを感じたり、冷たい水でしみたりします。
痛みがあり、すぐに「むし歯かな?」と心配になりますが、歯科医師や歯科衛生士が診てもむし歯の存在が確認されない場合は、このようなことが歯の内部で起こっていることがあります。
・たまに、歯や、あごに鈍い痛みを感じる、痛みを感じないときもある
・かんだら痛い
このような症状はなぜ起こるか考えてみます。
歯の根っこにはじん帯があり、このじん帯と骨がつながって、歯を支えています。
上と下の歯を咬み合わせたときに、若干歯は沈み込みます。これは根っこにあるじん帯が縮むからです。
そして、このじん帯のところにも神経が来ています。
試しに、指先を洗って、適当に自分の歯を指で押さえてみてください。
「押さえられている」と感じると思いますが、この感覚は、じん帯が縮んでいることを知らせる神経が教えてくれています。
じん帯というのは、硬い組織と硬い組織をつなぐセンイの束で、少し伸び縮みします。
じん帯を使いすぎると運動しすぎた後に足の関節などが次の日に痛むことがあります。
歯の根っこにある「歯周じん帯」も同じです。
歯が運動しすぎる(上と下の歯を咬み合わせて力を入れること)と、早ければその日に、遅いときは数日経ってから、なんとも言えない違和感、どちらかというとだるく、重く痛い感じ、いわゆる鈍い痛みをおぼえることがあります。どこの歯がそう感じているのか分からないことが多いです。歯科医師に伝えるときも、どう自分が感じていることを表現することに困ります。
その歯の運動というのは、上と下の歯が接触して、咬みこむことでじん帯が力を受けることです。
はっきりした虫歯や歯周病の進行などが認められないときに、このような痛みや違和感を訴える患者さんに対して僕がいつも問診しながら探っていることがあります。
それは、、、
症状が出現した前に、早ければ1~2時間前、あるいは半日、一日前に何か緊張下で何かをやっていなかったかを思い出してもらいます。人によっては数日前の場合もあります。
なぜなら、ひとは、緊張した状態でものごとをするとき、考え事をするときにくいしばったり、特定の歯をかみ合わせることがあるのです。くいしばることで、脳が受けるストレスが軽くなると考えられています。
むし歯などが確認できない場合は、患者さん自身がこれらの症状を引き起こしている可能性があると考えます。
この場合の治療は患者さんと一緒に、上と下の歯をかみ合わさなければ、できないようなストレスがなかったを探すことになります。
普段しないことをしていなかったか?
今までに、患者さんから問診して例えば以下のようなときにかみ締めていた可能性があることがわかりました
- 趣味の模型作りをしていた次の日から咬むと痛い。
- 社交ダンスのレッスン後にピーナツが食べるのが痛い。新型コロナウイルスでレッスンが中断してから食べても痛くなくなった。
- 夫が腹立たしい言動を最近してくることに対してガマンして言い返せないでいることかしら?
- 新型コロナウイルスの影響で、ずっと在宅ワークになっていることがストレスかも。
- 妻が交通事故にあって、昨日退院して、ほっとしたあと痛みを感じ始めているようだ。
- 習い事のパッチワークの発表会前で、作品作りに忙しいが、それかな?
- 部活終わって、夕方自室に入って寝ころんだ時に奥歯がダル重くなる。
- 締め切りの仕事に追われた次の日の朝、あご全体が痛くて、水がしみる。夜にかみ締めているのかも?
- 久しぶりに子供が家に泊まり、孫をだっこしていたからか?
などなど、患者さんにはまず「かみ合わせる時間が長くなると症状が出ることが多い」ということを、納得できなくとも、「そんなものかな?」くらいに理解してもらってから、探します。
そうすると、心当たりがあることが見つかることが多いのです。
くいしばりが痛みの原因の場合は、習慣を変える必要がある。
食事以外の時は、かみ合わさない!
これをまず実行してもらうことです。