気温差が大きくなると、くいしばり時間が増え、歯にかかる負担が大きくなりトラブルが多くなる。
という、科学的根拠がない感覚的なものが私にはある。
ここ数年この仮説を立てて、前日の天気予報の気温の変動から、次の日の救急患者さんが増えるのか増えないのかを占っていた。
そして、今年も夏から秋口にかけ、予想していたら、やはり痛みを訴えたり、歯が欠けたり、差し歯がとれたりといった患者さんが今週は多くお見えになった。
診療所に来る人は歯磨きが上手なひとが、ほとんどであり衛生管理に問題があることが原因のトラブルはほぼない。
だから、ほとんどは「歯に負担がかかること」で起こるものだと考えていい。
今週は、「気温の変化がストレスになり、くいしばり時間が増え、歯が力を受けた」と推察できる人が例年のごとく多かった印象だ。
こういった急な患者さんが来ると、そのトラブルに対応しながら、いつものように、しつこく、問診する。
症状が出る数時間から数日前に、いつもと違うことをしなかったか?
力仕事だけでなく、慣れないこと、精神的緊張をもたらすことなど、、、、いろいろ聞きだす。
こういった事に心当たりのない人は、気温が下がることで体がストレスを受けたことが原因だと考える。
もちろん、その中でも「季節の変わり目仮説」に合わない人もいた。ただ単に、力仕事を数時間やった後で奥のブリッジを支える歯が痛くなった方だ。原因は昼間の「りきみ」だ。
他の方は、全員とは言えないが、ほぼ、朝、目覚める前に体が無意識で予想していた気温、室温よりも低いことで筋肉が緊張したのだろうと思われた。症状を自覚したのが午前中だったからだ。
「朝食に何も硬いもの食べてないのに、金属のつめもの外れた。」
「午前中頭が痛くて、歯もどこかわからないけどダル重い。」
今年は、とても暑い日が続いていたので、クーラーをつけたまま寝る人もいる。
クーラーはタイマーでコントロールしたとしても、ふとんは薄いものが多いだろう。
人間は恒温動物だ。
周囲の温度が下がった時に、自動的に筋肉を緊張させて体温を奪われないようにする。
寝ているときに、無防備にさらされている、首。
首の皮膚の近いところに、頭部に向かう、大きな動脈、けいどうみゃくがある。
ここが、外気と体温の温度差を感じ取ると、首、頬、側頭部にある大きな筋肉を緊張させて体温を保とうとする。
結果、くいしばり時間が増え、患者さんは無意識に自分の歯を痛めてしまう。
気持ちよさそうに寝てはるけど、首から下はふとんかぶってはるけど、首と肩があきまへん。
これやと、朝方、無意識に体が「さぁ、朝が来るでぇ、準備しよう」って考えてくれている時に、首やあごの筋肉を緊張させてしまいまっせ。
肩もこる、頭もイタなる、ヘタしたら歯もイタなるかもしれん。
気温が下がってくる季節の心得
この女性は、ばっちりですわ。
首と頭がちゃんと、体温を奪われんように、ひと工夫してはる。
ちょっと朝から好きな方を思うような、まなざしやけど、歯は快調なはずや。
頭もイタないし首もイタない。
残暑がキツい日がまだ続いているが、少し涼しくなったと感じているひとは多い。
気温差が激しくて、からだが、ついていけない。
冷えはよくない。
こんなことは、昔から言い古されていることだが、口のトラブルを防ぐにも、私はよく患者さんに次のことを伝えている。
頭寒足熱(ずかんそくねつ)と言って、頭は冷やして、下半身をあたためたほうが安眠できるのも事実だ。
しかし、朝方首が冷えると、首から上の筋肉が緊張するので気を付けてくださいと。
おススメは、フェイスタオルでいいので、寝る前にふわりと、首の上にかけておく。
バスタオルはまだ、暑すぎるかもしれないが、秋が深くなってきたら、バスタオルでもいい。
汗は吸い取ってくれるし、くびの動脈を必要以上に冷やすこともない。
別に巻かなくてもいい。かけるだけでいい。